児玉徳美

情報が絶えず変化するように、知識や思考も静的・固定的なものではない。新しい状況に応じて新たな知識や思考が構築されることになる。ある言説や事態に接するとき、話し手・聞き手は絶えず変化する情報とそれまでに蓄積された知識や経験に基づいて言説や事態を判断解釈しようとする。この判断解釈の過程が思考である。心の中での思考過程ではさまざまな思いや想定が交錯し、せめぎ合っている。交錯する思いや想定を形成する主要なものは、ことばに埋め込まれている意味である。人がどのように世界を認識把握しているかは、ことばの意味を通して理解される。この意味は新しい情報としての言説や事態が直接明示する意味に限らない。言説や事態から間接的に誘引される意味も含まれる。間接的な意味の中には話し手・聞き手、あるいは共同体社会の知識・価値観・信念体系・意図・言説の秩序・慣習・組織・制度・権力など、雑多なものが含まれる。人は交錯する思いや想定をつなぎ合わせて最終的な判断や解釈をしていく。特定の言説や事態に対して個人や社会の判断解釈が異なるのも、多様な意味のうち何を選び、何を重視するかの違いによる。特定の判断解釈の経験を重ねるにつれて、その判断解釈は当事者にとってやがて知識として蓄積されていく。

情報の役割:その光と影(PDFファイル)

2 thoughts on “児玉徳美

  1. shinichi Post author

    (sk)

    とてもいい文章なのだが、「神」とか「心」というような単語が、読む気持ちを萎えさせてしまう。

    • 文字は最初神の声を伝えるものであったが、やがて人間の心に変化をもたらし、神の声から独立し、ことばや社会を変えていった
    • かつて神の意志で動いていた人間が自らの意志をもつようになり、その後は武力や政治・経済の圧力を通して、あるいは「正義」や「論理」の名のもとで歴史をつくってきた
    • 心の中での思考過程ではさまざまな思いや想定が交錯し、せめぎ合っている

    というような文章が少しでもいいから違った感じで書かれていれば、もっと素直に読めただろうに。

    研究者の文章は、部外者には少しつらい。

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